研究には自信がある。しかし、どうしても通らない…
「ごく弱い超音波の刺激で、
傷の治りを速める」
という、
画期的な創傷治療促進の研究
に取り組んでいた
現・日本医科大学教授の高田弘弥さん。
過去、2年連続で研究助成金を応募し、
いずれも審査で落選したこともありました。
「3度目の正直。
何としても成功させたい」
という想いで挑む、
そんなとき、ふと、
10年以上前の記憶が
頭をよぎります。
それは、高田さんが
三菱商事の事業開発部門で、
化粧品原料の研究業務に
携わっていたときのこと。
「研究業務」と言っても、
研究だけに従事していた
わけではありません。
その部署は、新規事業の構想を
月に何本も求められる部署。
高田さんも例外でなく、
新しいビジネスアイデアを考え、
プレゼンテーションするのですが…
プレゼンをはじめても、内容についてはおよそ上司は聞いてません。
そして、最後には必ずこう聞かれます。
『で、それでいくら稼げるの?』
…もちろん、お金は大事だけれど、
プレゼンターとしてはアイデアの内容にもっと興味を持ってほしい。
相手の胸に刺さるようなプレゼンがしたい!
浮かぶ新規事業アイディアと上司の反応のギャップに、
自らの実力不足、不甲斐なさを抱えていた
高田さん。
その転機になったのは、
「鉱山でのオペレーション無人化」
それはこんな内容でした。
オーストラリアの鉱山で稼働する大型車両や建設機械を
東京の本社からリモートでコントロールし、
現場を無人化しようという構想。
今でこそ自動運転やVRなどの技術で実現可能ですが、
当時は荒唐無稽であると受け止められ、
「そんなバカな…」という反応が
大方でした。
しかし当時の技術レベルで十分に可能であることは高田さんには分かっていました。
実現は必ずできる。
そして、鉱山業務ニーズもきっとあるだろう。
それは、その通りでした。
鉱山では、業務以外の雑事にとんでもなく手間と労力がかかっていたのです。
・トイレに行くにも鉱山から車で10分かかる
・日常品の買い物もセスナで移動しなければならない
不便で過酷な労働環境で、
鉱山が閉鎖の危機にあることをプレゼンで上司に伝えていきます。
問題をストレートに示したことで、
周囲が共感し、実証実験から始まりプロジェクトが実現。
成功しました。
結果的に巨大な利益にもつながりました。
高田さんは学びました。
プレゼンテーションには
課題の選択(できるだけ切迫していること)
表現(短時間で人の心を動かすこと)
が大事であることを。
この成功体験から時は流れ、研究助成3度目の申請に話を戻します。
高田さんは、
なぜこの研究が必要なのか、
世の中にはどんな問題が起こっているのか、
短いプレゼンで、聞く人の心を動かせる事実を示しました。
医学界の常識では、
「そんなバカな…」
と言われ続けてきたものの、
根拠とデータはそろっています。
誰にも否定はできない説得力をもって、
こんどは見事、審査を通過。
4.1億円の助成を受け、
研究を大きく前進させることができました。
「鉱山の件だけでなく、
短時間で人に聞いてもらうにはどうすればよいかを
三菱商事ではとことん考え抜きました。
ここで学んだことが、
自分を大きくしてくれました」
高田さんはこう振り返ります。
今では、多くの研究者、企業の関係者が、
高田さんの話を聞きに、やってきます。
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