ミドルマンCEOの三澤透さんは、新しいリーガルテックに挑む起業家。オンライン完結の紛争解決サービス「Teuchi(テウチ)」を運営し、難しい司法の課題を解決するべく、国の規制やマーケットと日々奮闘しています。
「良いものを作れば売れると
思っているバカだったんです」
三澤はカラカラと笑った。
上場企業の法務部長を辞め、
創業したのは司法をDXする
「ODR(Online Dispute Resolution)」のビジネス。
裁判外の紛争解決策である
「調停」をオンライン化。
ユーザーは裁判所などに出向くことなく、
チャットだけで話し合いを
完結させられる。
日本では敷居が高い
司法サービスの時間、手間、コストを
大幅に削減するアイデアだ。
とはいえ、2012年の起業当時、
ODRを実現するのは法令上難しく、
三澤は法務省に働きかけるなど、
ルールづくりに多くの時間を割いてきた。
役所や業界団体が固持する岩盤規制は厚く、
何年も突破口を見いだせずにいた。
転機は2018年の冬。
1本の電話が鳴る。
「内閣官房のAと申します」
ODRについて聞きたいと言い、
霞が関に三澤を呼び出した。
A氏の熱量は相当なものだった。
数時間の議論を幾度も繰り返した後、
ODRは政府の成長戦略に採用されたのだ。
こうなれば、腰の重い法務省も
急ピッチで制度を整える。
「これで行ける!」
…はずだった。
やっとの思いで規制を切り崩した三澤だったが、
今度はビジネスの厳しさを痛感する。
三澤はODRを離婚調停の
ソリューションとして見込んでいたが、
離婚はすでに弁護士事務所の主戦場。
競合が年間何億円もかけて販促する
マーケットでポジションをとるのは難しい。
ならばと、自治体との連携を進め、
一定の成果を得たが、
意思決定にかかる時間が長すぎて、
スタートアップのスピード感にはそぐわない。
良いサービスをつくるのは難しいが、
それをビジネスとして成立させるのも
同じくらい大変なことなのだ。
三澤は確信を持って進めてきた
ビジネスモデルへのこだわりを捨てた。
法律×ITを軸足に、
ひとつのモデルを進める他方で、
別のモデルを模索。
柔軟に可能性を検討し、
スピーディにチャレンジするスタイルだ。
今、個人向けのマーケットから転換し、
企業向けの「債権回収」に
活路を見出している。
【執念としなやかさ】
ビジネスには実に複雑な要素があり、
決して一筋縄でうまくいくものではない。
紆余曲折の中で、
岩盤規制を突破するような執念と、
ビジネス環境に対応するしなやかさの
両方を兼ね備えていくのが、
起業家の強さなのだと
考えさせられるお話です。
ミドルマンの債権回収はODRの要素を組み合わせ、
企業や団体が手間やコストをかけず、
未収金を回収できるサービス。
リリースから半年余りで、
取扱債権額が2億円を突破するなど、
期待の大きいビジネスです。
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