独特な顧客起点のものづくり
「NAVY.WO」が創業以来、廃棄ゼロを実現できるのはなぜか?
リサイクルやリユースの類ではない。 小松はこれまでつくった商品のほぼ全てを売り切ってきている。
大前提として 大量生産して販売するメガブランドとはビジネスモデルが異なる。
それでも、直営店を複数店舗以上運営し、売り上げを上げながら商品すべてが売れるということは、普通はない。
売り抜く秘密のひとつは、 「お客様の一人ひとりとスタッフたちの顔を思い浮かべる」というものづくりのプロセスにある。
「この色はAさんなら気に入ってくれそうだ」
「この柄はBさんに提案してみたい」
「このサイズ感なら、あの店のスタッフにぴったりだ」
小松の商品企画は、そんなふうに顧客(個客)起点で、良い意味で裏切っていくことを加味しながら意思決定される。
トレンドの理解は大切だが、振り回されない。
年齢や属性でターゲットを絞ることもなく、感覚で共感し合える個人をイメージする。
なにせ、イメージするのは小松がよく知るお得意様やスタッフだから、気持ちをつかむ精度は高い。
一人に刺されば、似た感覚を持つ他の顧客にも刺さり、 適切な量の商品が売れていく。
「顧客層を言葉にするなら、友人同士で食事には行くけれど、大人数の飲み会は苦手な方たちのイメージかな」と、小松は言う。
こうした独特の感覚にもとづいてブランドを運営する小松らは業界でも特異な存在だ。
もちろん、
「最後まで商品を大切に扱い、売り切るつもりでつくる」
ブランド全体に浸透する強い気持ちと努力もあり、結果的に廃棄ゼロを続けてこられた。
会うと元気になる
今日も小松はショップに立ち、自ら接客に携わっている。
商品を売るというよりも、お客様と会話を楽しむ感覚。
本や映画の感想を言い合ったり、 おすすめのレストランや旅先の話をしたり時には転職や恋愛の相談を受けたり。
名古屋や北九州のショップへ出かける際は、 事前に近くのお客様に連絡すると、 時間を合わせて来店してくれるという。
「会うと元気になる」と、一部のお客様から「小松クリニック」の呼び名も。
「一人の顔を思い浮かべる」ものづくりも、近からず遠からず、お客様との絶妙な関係があるから可能なのだ。
50歳に近づき、「アパレルショップに年輩の男性は似合わない」と、店頭での接客から身を引くことも考えたが、今は違う。
二度と体験したくない過酷なコロナ禍を経験し、今も心の奥に傷は残るからこそ、何気ない日常の素晴らしさが身にしみる。
お客様と会える歓びを大切に、常識や前例にとらわれることなく、人生を楽しんでいきたい。
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