物差しを整える
小森が飲食店と飲食人材の支援に携わって15年。
他と比べて、労働環境は厳しい業界だ。
それでも飲食業を選んで働く人には、共通する特徴がある。
「お客様を喜ばせたい」
「おいしい料理をつくりたい」
「仲間と楽しく働きたい」
強弱はあれど、 誰もが飲食が好きで、前向きな気持ちを持っていると、 小森は信じている。
ただ、モノの見方や価値観、表現の方法は 人それぞれ違うから…
個人対個人では行き違いやぶつかり合いが生じ、 耐え難いストレスにもなる。
Yのケースは、その典型に思えた。
こうは考えられないだろうか?
「店や仲間をより良くするにはどうすればよいか、 Yはみんなと話し合いたかったのだ。
やり方は支持されなかったが、 Yの前向きな気持ちは Mや他のスタッフと共通するはずだ」
視点を変えると、小森の中ですべてがつながった。
(同社に限らず)
飲食店の人間関係がぎくしゃくすること、
採用した人材が定着しないこと、
そもそも人材が集まらないこと、
その結果、経営者のビジョンが実現されないこと。
必要なのは「共通の物差し」だ。
一人ひとりの言動が「個人」ではなく 「組織」の価値観に合致しているか?
立場によらず、誰もが判断でき、 間違いがあれば指摘し合える明確な基準があればよい。
小森はMにひとつ提案した。
「できない「人」ではなく「こと」にフォーカスし、みんなで解決できるような、「行動指針」をつくってはどうでしょう?」
個人ではなく課題をターゲットにする狙いだ。
ミスやスキル不足は本人の失点ではなく、 チームで解決するべき課題となる。
個人攻撃は指針に反するから、 これまでのようなYの言動は、 部下からでも、その場で指摘できる。
一方でYは、スタッフの離職や店舗のオペレーションの責任を、ひとりで背負う必要はなくなる。
Mは提案を気に入り、早速現場の業務に落とし込んで、取り組みをはじめた。
いわく、「経営者が具体的な物事に介入すると業務命令になってしまう、抽象的な指針なら共感を得られる」。
マネジメントも現場の人間関係も、それぞれの価値観に、他人を当てはめようとするから苦しいのだ。
ビジョン・ミッション・バリュー
飲食店は、お客様に豊かな時間を提供している。
コロナ禍で思うように利用できなくなったとき、 多くの人がその価値を再認識したはずだ。
一方、業界で働く経営者、スタッフの 自己評価はあまり高くない。
飲食業はあまりにも社会に溶け込み、当たり前すぎる存在なのだろう。
しかし、その自己理解にこそ、さまざまな問題の「根」があると、今回のことで小森は気付かされた。
飲食人材は、自分たちがどのようにみんなの役立っているか、よく知るべきなのだ。
自らの存在意義と未来像を明らかにし、そのために共有する価値観が「共通の物差し」となる。
それは、個人の事情や感情を超え、同じ方を向いて議論するための強力なドライバーだ。
「物差し」は形式知として、現場のタスクやサービス、人材採用に落とし込んでこそ威力を発揮する。
小森は今、飲食店経営者とスタッフの想いを「ミッション・ビジョン・バリュー」として整理、明文化するサポートをはじめている。
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