あのAmazonも20数年前は『大量の赤字』を出し続け、「ネットビジネスをわかっていない!」と、冷ややかに見られていました。赤字の元凶と批判されたのも、評判を裏切って黒字転換したのも、後にGAFAの一角を担う巨大企業にまで成長したのも、すべてに共通する“ひとつの要因”があります。
『物流』です。
“非常識”な選択だった
ネットビジネスのメリットは、ズバリ「在庫や人員を抱えずに商売ができること」。
例えば、多様な売り手と買い手を結びつける場をネット上に提供し(マーケットプレイス、モール)、販売手数料などで収入が得られれば、とてもフットワークよく、ぼう大な商品を取り扱うことができます。
実際、多くのECプラットフォームは、自社で在庫を持っていませんでした。
しかし、Amazonだけは真逆の選択をして『倉庫に投資』し『自社で在庫』を持ちました。
当初は、批判的な意見や懐疑的な見方の方が多かったと言いますが、なぜAmazonはこの選択をとったのか?
すべては買い物体験の向上のために
今、あなたがネットショッピングをしていて、商品の到着予定が「ご注文から1週間前後」と言われると、ちょっとガッカリしませんか?
お店がネットで注文を受けて、配送手続きをして、遠方から届けるとなると、それくらいかかるのかもしれません。
でも、よほど特別な商品は別として、近くのお店で売っている新刊の書籍を、何日も待つ気にはなれませんよね。
それどころか、Amazonが最初に参入した当時のネット書店では、注文してから何週間もかかったり、結局届かないことも稀ではない、という状態でした。
だからこそ、Amazonはモールやマーケットプレイスだけでなく、巨大な物流センターで大量の在庫を管理し、物流をコントロールしているのです。今では、書籍だけでなくあらゆる商品を『翌日お届け』、場合によっては『当日お届け』される体験を、当たり前にしてしまいました。
圧倒的な「品ぞろえ」と「スピーディ確実な配送」を両立し、まさしくネットショッピングの『価値体験』を変えたのです。
独自技術で突き抜けた
Amazonの物流センターは、イノベーションの実験と導入の基盤となっていきました。
例えば、倉庫内のロボット運用やドローン配送などで、Amazonは世界をリードしています。
ネットの中だけでなく、リアルの『物流』に踏み込んだことで、Amazonは独自の技術を洗練させ、世界を支配する企業にまで成長したのです。