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小越 建典

アレが一国一城と引き換えに!?

日本史の有名人といえば、皆さんは誰を思い浮かべますか? 坂本龍馬、真田幸村、徳川家康…と魅力的な人物はたくさんいますが、一番人気は戦国のスーパースター【織田信長】ではないでしょうか。

 

織田信長は「天下布武」のスローガンを掲げて、武力による天下統一の意志を鮮明にしました。室町幕府を滅ぼしたり、比叡山を焼討ちしたり、乱暴者のイメージが強いかもしれませんが、優れた経営者でもあります。

 

例えば、楽市令で商業の制限をなくし、商工業を活性化して城下町を発展させました。関所を撤廃して、自分の支配領域内の物流をスムーズにしました。商いをする人から場所代を取ったり、旅人から通行料を取るより、領国の経済を発展させたほうがメリットがある、ということでしょう。

 

信長は当時の新兵器である鉄砲を大量に駆使して戦に勝ちましたが、それができたのは強大な経済力があったからです。

さらに、信長の革新性にうならされるのが「御茶湯御政道(おちゃのゆごせいどう)」です。信長は、**乱世の貴重な癒やしであり、武士の教養とされていた茶の湯(後の茶道)を政治に利用しました。

 

鎌倉時代から何百年もの間、武士の主従関係は「御恩と奉公」というギブ・アンド・テイクで動いていました。家来は有事に主君のために戦い、主君は新しい土地を与え、その権利を保護します。

 

主君が戦に勝って領地を広げているうちは、家来たちも多くの土地が得られます。しかし、土地には限りがあり、例えばモンゴル帝国に攻め込まれた元寇の際には、戦に勝っても武士に与える報酬がありませんでした。

「御恩と奉公」には潜在的な矛盾があり、それが鎌倉幕府滅亡の一因ともされます。

一方、信長は茶道具の名品をかき集め、功績のあった家臣に恩賞として与えました。由緒ある茶道具、しかも強大な権威を持つ信長から拝領する茶道具です。

 

信長配下の有力武将のひとり滝川一益は、戦の勝利に貢献した際、広大な領地よりも「小茄子」と呼ばれる茶入を欲しがったと言います。信長は小さな茶器の価値を、一国、一城にも匹敵するまでに押し上げたのです。

何百年も続いた「御恩と奉公」の原理を変えてしまった。これは、豊臣秀吉や織田信長にも引き継がれるのですが、「新しい価値を創造する」という信長の発想は天才的です。

 

現代のビジネスでも、「新しい価値の創造」をテコに、世界を変えられる可能性があります。

 

アーティストの長坂真護さんは、ガーナのスラム街に不法投棄された電子廃棄物を材料に、作品をつくっています。

 

彼の作品に1000万円以上の価値がつくのは、もちろん作品そのものの魅力もありますが、「ガーナのゴミで作品をつくって、それを売ったお金でリサイクル工場を建てる。ゴミで稼いだお金で地球をきれいにして、人を幸せにしたい」というビジョンが共感されるからです。

長坂さんが掲げているのは、「サスティナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」。「文化」「経済」「社会貢献」の3つの歯車が、持続的に回る活動です。

 

彼の作品を所有することには、文化的な価値に加え、「スラム街を発展させる」という社会貢献の価値が付加されます。そのことを多くの人が認めるほどに、作品の経済的な価値が上がっていく、というメカニズムです。

 

みなさんも、織田信長、長坂真護さんと同様に、これまでにないダイナミックな価値創造を、考えてみてはいかがでしょうか?


 

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